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大航海時代Online - in Euros - さだまさしをBGMに模擬をする軍人 Archieがつづる航海日誌です

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船乗りの保険

今日UPするのは、2010年の夏のコミックマーケット・天城屋出版出展作品「天声兎語」に載せて頂いた超短編小説です。
天城屋出版の許可を頂いたので、ブログにて2回に分けて公開したいと思います。
(コピペ作業してたら、なんだかとてつもなく、公開するのが恥ずかしくなってきたぞ!というのはさておき)

この物語は、リスボンの冒険者ギルドで提示される「船乗りの保険」というクエストを題材にしています。
本文は、そのクエストに沿うように進めているつもりです。
ちょっと時間の空いた時にさくっとできるクエストなので、本文を読まれた後にでも、ぜひ受けて頂いて、
そして、私が感じたリアルとゲームがリンクする面白さを、皆さんにも味わって頂けたなら、非常に嬉しいです!

なお、作中に登場する冒険者たちは、私がDOLを始めた頃からの古い友人です。
名前を使うことを快く了承してくれました。心から感謝しています!
登場人物の普段を知る方でしたら、文中の口調にくすっと笑える部分があるかも、しれません。(・∀・)
そちらも合わせてお楽しみ頂ければ幸いです。

それでは続きを読むからどうぞ~!

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「船乗りの保険」



「ええええっ、戦闘用ピンネースに拿捕されたの!?」
リスボンの酒場に、女性の大きな声が響いた。ざわついていた店内が瞬間静かになり、大勢の客の視線が一箇所にそそがれる。彼らの向ける視線の先には、朱色のサリーを着た女と、銀色の鎧に身を包んだ男がいた。

男は周りの視線にどきりとしながら、できるだけの小声でその女に反論した。

「しぃぃっ!声がっ……大きいって……!」
「だって、アーチーの船は戦列艦じゃない。」
ありえないじゃない、という言葉が聞こえそうな顔で、大声の主はアーチーと呼ばれた男を見据えた。

「うわっ、ミハルコさん、そんな目で見ないで!!」

居心地の悪さを感じたアーチーは、注文した生ハム盛り合わせを手にとると、カウンターの後ろに並んでいる丸テーブルへ逃げるように移動する。移動した先には、商人風の男と、紫色のコタルディを着こなした軍人の2人が座っていた。
アーチーが皿をテーブルに置くと、2人はそれにさっそく手を伸ばした。自分が運んだ料理が皿の上から消えていくのを見ながら、アーチーは腰から落ちるように椅子に掛けた。

「待った、待った、マンゴープリンがまだだよ!」
手に人数分のマンゴープリンをかかえて、ミハルコが追いかけてきた。急いだせいか、プリンがお皿からこぼれ落ちそうだ。ミハルコはふぅと息を整えると、椅子を引いてゆったりと腰掛けた。4人全員が席についたのを見届けて、商人風の男が口を開いた。

「船の耐久が極端に低かったとか?おかしいな。僕が作った船なんだが」
「トモヤ氏が造った船だったのか」
スプーンをにぎりながらミハルコが相槌を打つと、それを否定するためにアーチーがこう言った。
「トモヤさんのせいじゃないさー。おいらが、」
「欲張るからだな」
既に一樽空けたとは思えない冷静な眼差しで、コタルディの軍人がアーチーの言葉をつなげた。
「チェイサーさまのおっしゃる通りです。はい……」
「どういうこと?」
肩を落とすアーチーを見ながら、ミハルコが首をかしげて質問する。

「つまりさ、一攫千金を夢見たアーさんは、市場にあまり出回っていない紋章を取りに行った。とこらがどっこい、」
「あーあ、ろれつまわってないよこの人」
会話の途中でも構わず突っ込みを入れてしまうのは、ミハルコの日常的なくせである。
「せっかく分かりやすい説明なのに残念」
トモヤがにやつきながら、チェイサーの反応を伺った。
「ところがどっこいね!」
「とこらがどっこい。」アーチーも加わり、3人が声も大きく合唱する。
チェイサーは左眉毛をひくっと一度動かすと、何事も無かったかのように説明を続けた。

「商船隊から紋章を頂こうとして、自船の船員が混乱しているにもかかわらず格下だとなめて戦闘を長引かせたら、総崩れになって拿捕された、ってところだろう」
「ひと山あてようとして、失敗しちゃったわけかー」
「そういうこと」
チェイサーはそういい終えると、手に持っていたジョッキを傾けてぐっと酒を飲み干した。満足そうな顔である。
それを見たミハルコも、マンゴープリンを食べることに集中しだす。
4人の会話がちょうど途切れたその時、後ろから声がかかった。

「ひと山あてようとして失敗するのは、何も旦那だけじゃないぜ」

そこには、酒場マスターが立っていた。





「これはギルドに出した依頼だが、報酬が低いせいかみんな受けてくれなくてね。つい最近拿捕された旦那だからこそ、お頼みしますよ」
「拿捕されたを強調されるのは恥ずかしいから、やめてくれよマスター。」顔を真っ赤にしながらアーチーが答えると、何か面白いことが起きそうだと先ほどからアーチーの隣でそわそわしているミハルコが、マスターを促した。
「で、どんな依頼なんですか?」
「いや、なに、簡単なことさ」
「僕にもできるかな?」トモヤがそれに続く。
赤い顔のアーチーを除けば、みな話を聞く気まんまんといった様子である。
それを見て、マスターはうなずきながら話しはじめた。

「俺の知り合いの船乗りが、交易でひと山あてるつもりが船を難破させちまってね。あいにく無保険だったもんだから、莫大な借金だけが残ってさ。今は行方知れずよ。ただ先日一通の手紙がきて『二度と失敗をしないよう保険について学びたい。再び航海に出る日に備え、調べておいてくれ』って書いてあったんだ。俺は船乗りの保険についてはよく分からんしな……」

「それで、そのことについて僕たちが調べるんだね」分かったという風に、トモヤが言う。

「その通りよ」

「航海に出る前には保険に加入しとけって、航海者養成所で口をすっぱくして言われるのにね」とミハルコが口をとんがらせながら言った。
チェイサーはそれにうなずくと、
「その人も無謀だね。俺の記憶が確かなら、保険加入について出航所で2度も3度も聞かれたよ。正直うんざりするほどにね」とその時の情景を思い出したのか、げんなりした声で言った。

「まあそういう訳だから、まずは銀行員あたりに、船乗りの保険について聞いてみてくれよ。頼んだぜ」

「はーい!」
こういった調査が大好きなのだろう。ミハルコが元気よく答えたことで、4人は依頼を引き受けることになったのだった。





リスボンの銀行前はいつ来ても大混雑だ。さすが首都の中の首都と言われるだけはある。対応窓口の周りは、人垣が二重にも三重にもなっており、その人垣を見るだけで田舎出の者はめまいをおこすという。そんな中、大勢の客に対応している行員をつかまえて、ミハルコがこう質問した。

「すみません、船乗りの保険ってここで取り扱ってるんですよね」

行員は、にこやかにうなずくと、手短に説明を始める。

「保険の加入手続きと補償金のお支払いは、ここで行っていますよ。航海日数分の保険料を頂く代わりに、事故に遭った時はあらかじめ設定した金額を限度に、補償金が支払われる仕組みです。これがあれば安心して航海ができますよ!保険についてもっと詳しくお知りになりたいのでしたら、ロンドンの学者に聞いてみるのが良いですね。今はロンドンが保険の最先端の街ですから」

「えっ、ロンドンですか?」

失礼します、とお辞儀をして行員が立ち去った後、4人は互いの顔を見つめ合った。
アーチーは怪訝な顔をしているし、トモヤは肩をすくめて分からないといった風だ。
自分たちに馴染みの深いロンドンが、保険最先端の街だとは露ほどにも思わなかったからだった。


「あれか、生きるべきか!死ぬべきか!ってやつ?」
沈黙を破ったのは、チェイサーだ。だが、その言葉の真意は3人には伝わらなかった。
「何それ?」
「……。今の台詞は的外れだけど、ロンドンに居たシェイクスピアの作品で『ヴェニスの商人』ってあるじゃん。この作品に出てくる貿易業者が、航海途中の船の利益を信じてユダヤ商人から借金するんだけど、船が港に戻ってこなくって借金返済できなくなるっていう」
「悲惨だなー」
「3000ドゥカートを返せない時は、自分の肉1ポンドを切り取って返すっていう契約でしょ?」
「ゴードンか!金返せ!」
「そうそう、それそれ。これも、船が事故で戻ってこない場合を考えてちゃんと保険かけてたら、保険金が下りて肉切り取られなくてすむっていう話じゃね?」
「ふむふむ」
「保険と、ロンドンと、シェイクスピアねー。つながる様でつながんないわね」
みな思考にふけっているのか、4人の間に再び沈黙が流れる。

「ビスケー湾北上していい?」
この場では解決しそうにないと判断したのだろう。トモヤが切り出した。
4人はすぐにもリスボンを発つことにしたのだった。

【続く】
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